3,死という事実,そして心 2
統合失調症(旧 精神分裂病)という名前をお聞きになったことはありますでしょうか? 私は,いろいろな精神疾患の中では,比較的有名なものだと思っています。 まだまだ,その病気の正確な情報への認知度は低いと思いますが, 体のいろいろな器官での疾患と同じように,機能的な障害であり, 脳の中での物質的な伝達障害であることがわかっています。 そして,遺伝的な要因としての可能性が,0(ゼロ)ではないことは, 世界的に認知されるだけの研究結果として公表されてもいます。 しかし,研究の結果が出るということは,同時に,遺伝子レベルでの原因が, 特定されつつあることを意味してもいます。 遠くない未来に,いろいろな対処方法が確立される可能性は高いと言えますし, 必ずしも,マイナスの作用だけではないことが立証される日も,必ず来るはずです。 (参考資料) (多数の遺伝子の偶然的な組み合わせが100%完璧に同じである一卵性双生児の方であっても, おふたりとも,罹病される確立は最大でも50%にすぎません) けれど,日本においては,この精神疾患の領域の研究は,非常に遅くれているし, また,正確な知識を広めるための教育,啓蒙も,まだまだ,これからという状態です。 さらに,いろいろな精神疾患と自死との関連(正確に言うならば,疾患自体の把握)が, 正確に全国規模で調査されたことは,いまだに無いというのが日本の実情です。 そのような不明瞭な状況の中ではありますが,大うつ病,躁うつ病,統合失調症, アルコール依存症などの疾患と共に生きられている方の中での自死に至る確立は, それ以外の方に比べて高いと言うことはできそうです。 自死というテーマに関連するものを見ると,まず,その中であげられることが多いのは, 「 うつ病 」 という名前だろうと思います。 けれど,うつ病全般(うつ状態から躁うつ病などの広い意味で)の研究は, 上記の統合失調症のような脳医科学的な疫学研究段階には遠く及ばず, まだまだ,未解明の部分が非常に多く残されています。 また,病名として,他との線引きも,明瞭なものではないし,一般に認知もされてもいません。 (うつ病に関してはSSRI,SNRIなど副作用の少ない抗うつ薬の開発,薬物療法が日進月歩です) 未知なるもの,よくわからないものは,どんなものであっても, 人間にとって誰しもが,恐さを感じて当然だと思います。 より良い対処方法,適切な最新知識は,無駄になることはありませんが, むしろ,未来への過度の心配,悪い想定に基づくさらに悪い想定の悪循環は, 今を生きる上では,結果として,得るものの方が少なくなると,私は感じています。 いろいろな精神疾患について,臨床で日々奮闘されている医療関係の方や,研究者の方が, たくさんおられることは存じています。(もちろん,そうでない方も存じていますが) それらの方に対して,心から敬意を表するとともに,未知なる領域から新しい事実を見つけ出せることを, また,より満足できる結果が多い日々であることを心より願っています。 |